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2004年11月20日(349号)
■本物と口コミ
折りに触れて思い起こすのは、京都のお菓子屋さんである。京都には百年以上続いているお菓子屋さんが沢山ある。別段店構えを大きくすることもなく、商圏を拡大することもなく、先祖伝来の技法を伝承してこつこつと仕事を続けておられるように見える。しかし外面からは見えないが、恐らく単に技術伝承に留まらず、日々の仕事の中に創意と工夫を組み込み続けておられる筈である。そうでなければ百年以上も続く訳がない。
別段京都のお菓子屋さんに限らない。小さくてもキラリと輝く企業は、業種業態を問わず全国各地に意外に沢山存在する。地域にがっちり根を張っている個人企業、零細企業も多い。味噌、漬物、豆腐などの食品、家具・調度などの手作り品、扇子・団扇などの工芸品、地域独特の和紙などなど、みんな永年の技術と経験の蓄積と言える。
こうした仕事の考え方の根本は、本物志向である。本物を創るために不断の努力を続ける。いくら努力しても本物という理想の姿は、逃げ水のように前へ前へと逃げて行く。それでも本物へ向けて飽くなき努力を傾け続ける。ヒントや思い付きなら誰でもできる。問題は本物へ向けての実践努力である。
本物志向は物つくりだけではない。一流のスポーツ選手は決して現状に満足せず、常に一段上へ、更に一段上へと努力を重ねている。将に本物志向の姿そのものである。我々が日常携わる営業においても、その活動は本物への努力に他ならないと思う。本物の営業、本物の営業マン、我々商売に携わる者にとっての永遠の課題であろう。
ここで面白い現象は、本物は人が放っておかないことである。特にこれという宣伝をしなくても、本物は人から人へ口伝てに伝えられていく。いわゆる日本語英語の口コミである。口コミに費用は掛からない。而も宣伝効果において口コミに勝るものはない。一人のお客様に認められたら、十人のお客様に認められる可能性大である。昨今インターネットの普及と共に、口コミの波及度は数千倍、数万倍にまで膨れ上がっているから尚更だ。
しかし口コミは諸刃の剣である。マイナスの口コミを思うとぞっとする。一人のお客様に嫌われたら、十人のお客様を失う結果が待っている。北海道拓殖銀行がつぶれたのは、別段大きな欠陥が暴露された訳ではなく、町のオジさんオバさん達の間で「どうも拓銀はヤバイらしい」という噂が噂を呼んだ結果だと聞いたことがある。あるいはさもありなんと思う。
「ローマは一日にして成らず」の諺どおり、何事も積み上げるには永い年月を要するが、奈落の底へ落ちるには瞬時を要しない。プラスの口コミを味方にできる本物つくりに一歩でも二歩でも近付けるように、一日々々を大切に努力を続けて行きたいものである。
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