生活文化づくりのシステムコンダクター片山鉄建株式会社
ek広場
2005年4月20日(354号)

■『ご破算で願いましては』


 算盤のスタートは『ご破算で願いましては』で始まりますが、私はこの言葉が大好きです。この言葉の終わらぬうちに、算盤の上段の珠は端から端までさっと指で撥ね上げられますが、その音の清々しいこと。『ご破算で願いましては』はこの算盤の音と共に、耳の奥に灼き付いています。
 『ご破算で願いましては』は、又なかなか含蓄のある言葉だと思います。何か物事を考えていて、行き詰まると必ずスタートラインに戻って出直しますが、この出直しは将に『ご破算で願いましては』そのものです。私などは毎日が『ご破算で願いましては』の繰り返しです。
 『ご破算で願いましては』は、又足許を見詰め直す機会を与えてくれます。足許を見詰め直すと、自分のぼろ(弱点)が嫌というほど目に付きます。ぼろが見えることは、ありがたいことです。ぼろが見えてこそ修繕もできますが、ぼろが見えないと修繕もしませんから、ぼろは益々ひどく綻びます。時々『ご破算で願いましては』と足許のぼろを見ることは良いことだと思っております。
 昨今の目まぐるしい変化を眺めておりますと、
 『21世紀は20世紀とは違うな。』
とつくづく痛感致します。政治であれ経済であれ社会であれ、今まで経験したことのない世界情勢が目の前に展開して行きます。このような全く新しい時代を迎えては、過去の知識や経験は余り役に立ちそうもないどころか、却って邪魔になるとすら思えます。となればすべてを払拭した白紙の状態から考えるべしと思います。21世紀に望む姿勢は、将に『ご破算で願いましては』がぴったりではありませんか。毎年のことながら、気象庁は何日も前から桜前線北上の予報を発表し、人々は桜の開花を心待ちにしています。ところが桜はやっと綻びたかと思うと、瞬く間に満開となり、そしてあっという間に散り急いでしまいます。しかし日本人は古くからこの寸暇の桜をこよなく愛して来ましたし、今猶その心に変わりはないと思われます。むしろ寸暇の満開なればこそ、桜は日本人の心に強く食い込んでいると言えなくもありません。
 そして桜が過ぎると、これまた見事なまでに美しい新緑の候が訪れます。道端には春の草花が可憐な花を咲かせています。自然は騒々しい人間社会をよそ目に、毎年ゆったりとその移り変わりを私達に見せてくれます。この大自然のおおらかな『ご破算で願いましては』の前には、人間社会の現象は誠にちっぽけな物事と思えてなりません。しかも人間社会の物事は、この大自然の枠組から決して逃れることはできません。私達はおおらかな大自然の『ご破算で願いましては』の枠組をしっかりと胸に収めて、物事の判断に資すべきではないでしょうか。


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