今年のプロ野球はセ・パ両リーグの交流試合が始まって、目下そのさ中だが、大変な人気を呼んでいる。何しろ今まで対戦したことのない相手といきなりぶつかるのだから、興味津々である。しかも成績は公式記録としてカウントされるので、選手は真剣そのもの。今までどちらかと言えば影の薄かったパ・リーグの人気上昇にも好影響が期待できるのではないか。
ところで本稿は、セ・パ交流試合が始まる直前の4月末の阪神・ヤクルト戦の話題である。テレビ観戦をしていたが、先発投手の阪神杉山とヤクルト川島の好投で、お互いにランナーを出しながら4回まで得点を与えず、息詰まる展開であった。この日の解説者は往年の名投手江夏豊氏であった。投手が四球を与えた時、打者が見送り三振に倒れた時、野手がエラーをした時などに、アナウンサーの質問に答えて江夏氏が解説と共に、
『人間ですからね。』
と二、三度言われたのが妙に印象に残っていた。
試合は5回表に阪神が、連打で2点を奪い先行した。そして5回裏阪神投手杉山は、走者2人を出しながら2アウトまで漕ぎつけた。迎えるバッターはヤクルト4番打者の岩村。アナウンサーが、
『ここで岩村を抑えれば、杉山は勝利投手の権利を得られます。もし岩村に3ランを打たれたら、最悪の逆転となります。さてどうなるか。』
結果は最悪の岩村の逆転3ランであった。
この直後江夏氏はアナウンサーの質問に答えて、投球内容を解説した後、
『人間ですから失投も出ますが、ここで投手がどう考えるかが問題です。投球内容をどう反省するか、心の底から口惜しがるか、何かを掴もうともがく投手は育っていきます。何も考えない投手は最悪で、どうしようもありません。』
本田健氏が著書『きっと、よくなる』(サンマーク出版)の第一稿に、『最大のピンチは、最大のチャンス』と題して、次のように述べておられる。
『成功者たちの話を聞いていると、「人生最大のピンチをきっかけに、運がよくなり、人生が大幅にすばらしくなった」という人が多いことに気がつきます。人生のピンチには、離婚、事故、災害、病気、仕事やビジネスの失敗、破産などがあります。災難がふりかかると、どんな人でも苦しんだり、落ち込んだりするでしょう。しかし成功する人が普通と違うのは、その災難をきっかけに、いままでと違う生き方を選んだことです。人生のピンチは「そろそろいまの人生を変えるときですよ」と教えてくれるサインだともいえます。』
ピンチは予告なしに訪れる。大小の差はあれ、我々が何度もピンチに襲われるのは、人生の宿命である。そのピンチを乗り越えてこそ、人は成長し前進して行く。
ピンチに陥った時、どう考えるか。江夏氏の言葉に、ずっしりとした重みを感じた。
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