ある会合で評論家嶌信彦氏が、講演というより漫談を行なったが、面白い表現があったのでご紹介すると、
『20世紀は、男の世界、企業の世界だったが、21世紀は、女性の世界になる。感性或いはコミュニティの世界になる。20世紀はまだまだ女性の地位や社会進出は低かったが、今見てご覧なさい。特に若い世代では、はっきり女性の方が強い。社会進出でも女性の立場は20世紀とは比較にならない。旅行会社の人に聞いてみると、現在日本人の海外旅行者の7割が女性のようだ。女性は女性同士でコミュニケーションを作り上げる。海外旅行の計画も出来上がる。男はコミュニケーション作りが下手だ。海外旅行の3割の男性は「ワシも連れてってくれ」と奥さんに頼んで付いてきた男達、こういう男を「ワシも族」という。』
と言って聴衆を笑わされたが、着眼点はツボを得てござるなと思ったことだ。
平素、人さまの話を聞いたり、ものの本を読んだりしながら、全くの我流で取捨選択し判断をしているが、自分の知識の薄っぺらなこと、その判断たるや誠にお粗末な限り。広辞苑を開いてみる。あの分厚い広辞苑のどのページを開いても、知らない字句の方が遥かに多い。日本語の辞書なのに、知らない日本語の方が遥かに多いのだ。
辞書の下に埋もれていた“ことわざ辞典”なる本を引っ張り出して見た。その本の存在は認識していたが、普段は先ず読んだこともない。改めて眺めて見ると、4300程の故事・ことわざが採り上げられ、簡単な解説がなされている。これに又知らない言葉がいっぱい出てくる。我ながら呆れたり吹き出したり。この本の末尾に、項目別分類索引が載っているので、ちょっとつまみ食いのご紹介をしてみましょうか。
「人情・交際」偏
*合縁奇縁 *挨拶は時の氏神 *麻の中の蓬 *片手で錐は揉まれぬ *鼓琴の悲しみ *蓮の台(うてな)の半座を分かつ *一村雨(ひとむらさめ)の雨やどり
「生活・習慣」偏
*座して食らえば山も空(むな)し *世帯仏法腹念仏 *千石万石も米五合 *立って半畳寝て一畳 *豆腐の皮をむく *北国の雷 *向こう脛から火が出る *我が家楽の釜盥(かまたらい)
「商売・金銭」偏
*商いは草の種 *商人は木の葉も綿に飾る *朝女朝坊主 *奇貨居(お)くべし *触り三百 *銭無しの市立ち *握り拳の素戻り *針を蔵に積む *冬の雪売り *仏の印相丸印
いかがでしょう、皆様お分かりになりますか。これはほんのつまみ食い、ほかにも嫌ほど沢山あります。
とにかく知らないことが山ほどあり、特に専門外のこととなると、まるで盲目同然だ。そんな僅かな幅の知識・経験ではあるが、齢を重ねているうちにその蓄積により、何時の間にか自分を律し、物事を選択・選別している。又折に触れては人さまに、自分の意見を開陳している。「亀の甲より年の劫」とは、こういうことを言うのだろうか。
序でながら、パソコンのワードから「亀の甲より年のコウ」を打ち出すと、コウは「功」が使われている。広辞苑には「年の劫」と記された後に、説明文の中で「年の功とも書く」とある。だから「劫」でも「功」でも良いらしいが、「劫」の方が奥深く思えるので本稿では「劫」を用いたが、これも「亀の甲より年の劫」のなせる業か。
最近うんざりするほど嫌な事件が相次ぐ。政治・官僚・企業・社会・家庭・事故等々・・・将に事件のオンパレードだ。テレビを見ていた妻の話によると、日本を訪れた外国人が、連日テレビで頭を下げる人達を見て、“あれは何の儀式なのか”と問い掛けたそうだ。
「亀の甲より年の劫」が泣くではないか。