株式に関する基本観察
株式:
会社が出資者(資金拠出者)に対して発行する拠出金(会社から見れば借金)の証文。
株式会社:
資金が欲しい会社が、株式を発行して出資者(金貸し)から資金提供を受けた会社。
株主:
株式会社に資金を提供した(金を貸した)人または会社。株主はその会社の株式を持ち分だけ所有する。
(株式会社の経営者自身またはその身内数名が大株主になることも多く、こういう会社は同族会社と呼ばれる。)
株式上場:
株式が自由に売買できる市場(厳しい提出条件あり)に、自社株式を提出すること。
株式上場によって広く一般大衆から資金の供給を受けられるので、大量の資金を集めることができるようになる。
こう見てくると、確かに資金あっての会社活動だから、『株式会社は株主のもの』と言えなくもない。
しかし果たしてそうか。
現在世界的なカネ余り状況下に、貿易による物の取引代金1年分の数倍のカネが、毎日利益を求めながら国境を越えて瞬時に世界中を駆け巡っている。これらのカネは、短期の利鞘稼ぎや長期の企業買収など、いろいろな形になって現れる。日本でも一昨年来のホリエモンことライブドアの堀江貴文氏や、村上ファンドの村上世彰氏らの事件が明るみに出て、カネの世界の一端が垣間見られたが、世界的カネ市場から見れば、これらはままごとのようなもの。
最近悪質な短期利鞘の荒稼ぎ屋は、グリーンメーラーと呼ばれる。ドル紙幣の色の緑と、ブラックメール(脅迫状)を合わせた造語である。ホリエモンも村上ファンドも、グリーンメーラーと言われても致し方あるまい。
直近の話題では、不正会計問題で上場廃止寸前まで追い込まれた日興コーディアル証券に、米銀最大手のシティグループがTOB(株式公開買い付け)を実施、東京証券取引所の上場維持判断で、TOB価額アップのおまけまで付いて目下進行中である。シティグループから見れば、潰れかかった日興コーディアル証券は安い買い物だ。TOBが成功すれば日本の三大証券の一角がアメリカ資本になる。そしてアメリカ資本の狙いは、郵便貯金の開放を含む1500兆円と言われる日本の個人資産にあることは明らかだ。
鉄鋼業界ではミッタル・スチールが話題をさらっている。印度の富豪ラクシュミー・ミッタル氏が1989年創業以来、世界の鉄鋼メーカーを次々と買収し、遂に世界ナンバーワンのアルセロールまで合併して、社名をアルセロール・ミッタルとしてしまった。
これで新日鉄の3倍以上のダントツ巨大企業となった。僅か20年でカネが世界鉄鋼業界を呑み込んだようなものだ。新日鉄やJFEといえども、いつ何時ミッタルのTOBを受けぬとも限らない。
新日鉄の三村明夫社長は、
『合併には「いい合併」と「悪い合併」がある。短期的な収益を狙って売り抜けるような合併(先述のグリーンメーラー)は特に悪い合併だ。更に、自社では技術開発をせず、企業買収を通じて他社が100年かけて蓄積した技術を手に入れ、簡単に事業展開するというのも好ましい合併ではない。
いま問題になっているのは、合併に対する全体の法制だ。「いい合併」を促進し、「悪い合併」を阻止する仕組みを法体系として構築することが肝要だが、日本の現状は非常に緩い法体系のままであり、この状態で三角合併が導入されるとどうなるかと、危機感を持っている。』
と言っておられる。
([註]三角合併:会社の吸収合併を行なう際、消滅会社の株主に対して、対価として存続会社の株式ではなく、親会社の株式を交付して行なう合併のこと。)
何れにせよ昨今は、どうもカネがすべてに優先する拝金主義がはびこっているように思えてならない。「会社は株主のもの」とか、カネで面を張るような拝金思想が横行するようでは、とても美しい国になれる訳がない。