生活文化づくりのシステムコンダクター片山鉄建株式会社
ek広場
2007年8月20日(382号)

■M&Aは、世界経済を効率的に改造するか


 東谷暁(ひがしたに・さとし)氏著『世界金融経済の「支配者」』祥伝社新書を読んで、大変感銘を受けた。著者の東谷暁氏は、1953年山形県生まれ、早稲田大学政治経済学部卒業後、雑誌等の編集を経て、97年よりフリーのジャーナリストとなる、との簡単な紹介文が裏表紙にあるが、同氏が大変な勉強家であることは、この著作を読めば解かるし、巻末に示された参考文献が殆んど外国人著者であることからも、同氏の薀蓄の深さが想像できる。
 同氏は先ずプロローグ(序章)の中で、

 『敵対的買収(TOB)や企業の合併・買収(M&A)などの変化を起こした理由を一語で言い表すとすれば、それは世界経済の「証券化」にほかならない。』

と断言し、更に、

 『証券化は、単に資金調達の方法を拡大しただけではない。債権や不動産、さらには事業そのものが証券化されることで、経済がリアル(真実)な世界から切り離され、ただの数字の交換が行われるだけで現実を動かす、バーチャルな(仮想の)金融市場経済を生み出した。』

と喝破している。そして

 『日本経済の不良債権をビジネスにしたアメリカ金融界』
 『長銀を買ったリップルウッドの手口』
と続き、プロローグの最後は、

 『中国あるいはアジアや日本が作っているのは、モノという富だが、アメリカが作っているカネという富は、ドルを発行し続けるアメリカへの信頼だけが支えている。
現在の世界金融経済を見ていて私たちが抱く「謎」のほとんどが、この危うい仕組みと関係がある。これから、この危うい仕組みが生み出した「謎」を一つ一つ検討てゆくことにしたい。』

とプロローグを結んでいる。
 私が最も関心があったのは、第一章の
 『M&Aは、世界経済を効率的に改造するか』
である。本稿はこの第一章から、私が感銘を受けた箇所を採り上げてみたい。

『日本における一連のM&Aについての報道では、常に二つの主張が繰り返されてきた。第一が、世界は既にM&Aが普通になっており、日本は漸くM&Aの時代に突入するのだということ。第二が、M&Aが行われる際、帰趨を決するのは株主の意向であり、株主を中心に考えたM&Aが成功するということである。』

 『こうした株価中心のM&Aを正当化するには、M&Aによって株主たちが得をするだけでなく、社会全体の損得を計算した場合でも、全体としてプラスになっていなければならない筈だ。そうでなければ、単に株価吊り上げゲームということになる。
しかし、そんな証明が可能なのだろうか。そもそも、それをどうやって計算するのだろうか。』

 『企業というものは「生き物」なのだから、株価が伸びても、M&A後に内部抗争もなく業績も伸びて、社会に対する貢献も増大するとは限らない。また、企業は雇用の確保など社会的役割を担っているから、社会全体から見る視点も必要だ。にも拘わらず株価だけで計算しようというのは、実は無理なバイアス(偏見)がかかっている訳である。』

 『投資ファンドや買収ファンドが、たとえ自分の儲けのために行動したとしても、結果として経済にプラスになるのだから、むしろ大いに活動してくれた方がいい。こうしたプラスの評価が、現実を無視した議論であることは、これまでのM&Aの歴史を振り返れば簡単に解かる。』

 『M&Aを推進しようとする人達は、口を拭って語ろうとしないが、M&Aを急速に進めた80年代のアメリカが、どのような状態に陥ったかを少しでも思い出せば、とてもではないが、企業を活性化させ経済を活性化させるなどと言えたものではないのである。』

 『この時代、投資銀行ドレクセル・バーナム・ランベール社のマイケル・ミルケンが編み出したジャンク債が、M&Aの資金調達に乱用された。ジャンク債とは、評価の低い「くず(ジャンク)」のような社債だが、リスクが高いせいで利回りは驚くほどよい。そこでジャンク債をどんどん発行して、リスクは大きくても高い利回りに目がくらんだ投資家達に売りつけ、M&Aの費用に充てるわけである。』

 『もうひとつは、ヘンリー・クラビスたちのKKRが編み出したLBO(レパレッジド・バイ・アウト)という手法である。これは買収対象としている企業の資産とキャッシュフローを担保に資金を調達するという不健全な買収方法だが、当時は金余りを背景として、高いリターンを求めて資金を出す投資家達が大勢いた。』

『ジャンク債とLBOを組み合わせれば、実際には裏づけの危ういお金ではあっても、巨額の資金に膨らませることができる。』

『80年代のアメリカではLBOが一大ブームになった結果、経済全体が消耗してしまった。経営者は、M&Aで株価を吊り上げることばかりを考えたので、株価は上昇を続けたが、豊かさをもたらす労働生産性の伸び率はすっかり停滞してしまったのだ。』

 『敵対的買収について原則として是認するのはアメリカだけであり、ヨーロッパ諸国は原則として認めず、ドイツやフランスにおいては、外国企業の国内企業買収に対しては、政府が介入することも辞さない。英国の場合には、買収はすべて「現金」で行わなくてはならず、また、一旦買収のために株式買付けを始めたら、最後まで遂行しなくてはならないのだ。この英国方式を採用すれば、三角合併などは不可能であり、グリーン・メーラー(悪質な短期利鞘の荒稼ぎ屋)による利鞘稼ぎもできなくなる。つまり、ホリエモン事件も村上ファンド事件も起こる筈がなかった。』

 以上が本書第一章からの私の抜粋だが、以下

第二章 世界金融を支配しているのは、本当にユダヤ人か
第三章 中央銀行という「世にも不思議な物語」
第四章 グリーンスパン前FRB議長は、「神様」だったのか
第五章 アングロ・サクソン型経済は無敵なのか
第六章 中国経済は、アングロ・サクソン経済を圧倒するか
第七章 基軸通貨ドルが下落するのは、いつか
エピローグ 「運命の日」以後の日本経済

と続くが、東谷氏は夫々忌憚の無い意見を述べておられ、金融関連に疎い私は大変感銘を受けた。ご興味をお持ちの方には、ご一読をお勧めしたい一書である。



<<バックナンバー一覧

<<前月| 最新号 |次月>>

about us
片山鉄建株式会社 会社情報
ek広場
products
新規取り扱い商品
主な取り扱い商品
recruit
採用情報 片山鉄建株式会社
contact
お問い合せ
お問い合せはお電話でもどうぞ。大阪本社06-6532-1571 東京本社03-3551-6321
その他の営業所はこちら
copyright (C) Katayama Tekken Co., Ltd. All Rights Reserved.